「小春ちゃん、貸してあげるから早く仲直りして。朔たちと私は滑るから」
二日目の昼飯の時、瀬戸は俺の耳元で囁いた。
いつから、お前のものになったんだ。
ここにもおせっかいが三人いるのか。
ため息を吐く。
二人きりになっても関係の修復が図れるはずもない。
やっぱり、水野は俺をいないものとして扱った。
一人のほうが気分転換になると思い、後を追わなかった。
とりあえず、上級者コースを一人で滑った。
機嫌の悪い俺に近づいてきたやつは、睨んでさっさと追い返した。
水野は平気だろうか?
しっかり者だが、如何せん馬鹿だ。
しかも今は死人。
やっぱり気になった。
だから水野の様子をこっそり見に行った。
俺の心配をよそに、颯爽と滑っていた。
上原には及ばないが、ここ、雪国が地元だけあって、そこそこ上手い。
これなら問題ない。
これで心置きなく俺も滑れる。
少しでも、身体を動かせば気分が紛れるはずだ。
この時は、これが浮上のきっかけになるかも。
と、のん気に考えていた。