嫌なことを話さないのも、大人がすることじゃない。
とか、思っているに違いない。
愚痴らない大人がなんて、めったにいないぞ。
馬鹿が。
とにかくだ、水野の話しに耳を傾ける。
水野は泣きそうになりながら話した。
その内容は実にくだらない。
ただの痴話喧嘩としか思えない。
熱があり苛立っていた仁が、水野のわがままを叱った程度のもの。
徹夜明けで、熱があるのを知りながらも、水野とデートしたということは。
仁が水野に惚れているということではないか。
落ち込む必要がどこにあるのか、さっぱりだ。
それはもちろん言わなかった。
前々からわかっていたけど、仁も水野が好きだ。
そうでなければ、そこまでしない。
俺だって、水野に惚れていなければ、ここまで気遣わない。
熱だろうが、何だろうが水野が楽しみにしていれば俺だって行く。
それと同じことを仁はした。
水野が鈍感で命拾いしている。
とにかく。
仁、ただ一人にここまで振り回されている水野を見るのは嫌だった。
こいつは仁を基準としてしか物事を考えない。
どんなに好きでも異常だ。

