庭園で佳苗と仁が着替えてくるのを待った。


 木々が風に靡き、オレンジ色の空に散っていく。


 水野に倣い、空を見上げるがこの色がどうも気に食わなくてすぐに見上げることをやめた。


 こいつは夕方になると、家の中だろうが外だろうが必ず空を見る。


 そして、オレンジ色の空だとその夕焼けを眺めながら思い出話をしていたが、俺が注意をしてからは話さなくなって、ただひたすら嬉しそうに眺めている。


 やっぱりそれでも気に食わなくて、何かと理由をつけて窓から引き離す。


 本当に、振られたくせに何を考えてんだ。


 忘れる努力をしろと再三言っているのに、とうんざりしていたが水野の心は俺にすでに移っていて、仁はただの幼馴染になっていたのがわかったから、今日ぐらいは黙って眺めさせておいてやる。


 ぼけ~っと空を見上げていた水野がぴくりと動いた。


 その視線を辿ると仁。


 こいつは犬のように臭いだけで仁を判別するのだろうか。


 呆れて見ている俺になど目を向けず、水野は犬コロのように駆け寄り、仁も嬉しそうに水野の髪を撫でる。


 恒例行事にいちいち不機嫌になることはしない。


 きっと、それは昨日のことがあるからだ。


 本当に二人は仲が良いですね。


 そうなんですよ。


 こっちが恥ずかしくなるくらい仲が良くて。


 そんなことを水野と佳苗の両親はにこにこ話していた。


 で、佳苗が水野と同じようにドレスになって戻ってきた。



「来てくれてありがとう」



「お前は綺麗だったぞ。仁にはもったいない」



 俺の発言に佳苗の両親が笑った。


 普通は逆だと。


 こんな娘に、彼みたいなのを捕まえられたのは一生分の運を使い果たしたからに決まっている。


 そんな発言に佳苗はむくれた。


 仁は佳苗の両親も上手く誑しこんだらしい。


 全員がそろったところで、ホテルに向かう。