「母が、いたんです朝」
学校から出て少し歩き始めた時。
俯きながら出来るだけいつもの表情をして彼女は話しだした。
「お母さん?」
「はい」
そう言うと
家に帰ると誰もいないこと。
父は幼い頃になくなり母と自分だけとのこと。
月に一度しか帰ってこないこと。
つい最近知らない男と子どもと3人で並んで歩いていたこと。
朝もその子どもと母を見たこと。
全て包み隠さず鈴さんは話してくれて。
話し終わったすずさんは黙って聞きながらポンポンと俺が背中をさすりながら話を聞いていたのが落ち着いたらしく。
今にも泣きそうな顔で話してスッキリしました少し、と笑った。
その笑顔があまりにも悲しくて守ってあげたいと思った。

