…やめろ…やめてくれ…。

寒さは感じないが体の中が凍りついたようにヒリヒリと痛む。
黒い影が近づいているのか、自分が引き寄せられているのか、距離が徐々に縮んでいく。周りの景色グニャグニャと歪み始め、意識が朦朧としてくる。さらに全身の力が失われていくようだ。
もう、すぐ目の前まで近づいた黒い影が、男の首元へと手を伸ばしてきた。男は必死で後ろへ仰け反ろうとするが、黒い手は距離を無視して長く伸びてくる。

もうダメだ!

絶望を感じた男はとっさに握っていたモノを耳に当て強く念じた。

この世界から俺の存在を消し去ってくれ!!