「おはよ、若ちゃん。CD持ってきたよ!」

あの後、石川とは特に気まずくなる事もなく普段通りに戻った。


まあ、そうなんだよね。

手が触れただけで何かが変わるわけではないんだよ。俺が気にしすぎるのが変なんだ。


「晴菜、早く!一時間目視聴覚室だよ。

ほら、若ちゃんも。もう琢ちゃん達行っちゃったよ」


「あ、ごめん忘れてた!今行くからあおちゃん待ってて」


俺も忘れてた。教科書を用意してから席を立つと、たまたまそれが石川と同時のタイミングだった。


……うわ、いい匂い。

石川の髪の匂いかな。ふわっと俺の鼻をくすぐって通り抜ける。