「え……石川?」

暗い教室の中で、石川は一人で座っていた。

「うそ……若ちゃん……」


頭の中は一瞬で真っ白になった。だけどその次の瞬間には、頭の中の真っ白なボードに聞きたいことが次々と文字となって浮かびあがってくる。


……こんな時間まで何しているの?

……どうして電気つけないの?

……電車は大丈夫?


……どうして泣いているの……?



それより石川。そこは……


「えっと、そこ賢太くんの席だよね……」


石川は賢太くんの席に座り泣いていたんだ。今度は胸の中に黒いモヤのようなものがぐるぐるとうずまいていくのを感じた。


この状況でようやく俺は思い知らされるんだ。

俺の知らなかった石川の本当の気持ちを。