「……そうかも。うん、好きになってるかも」

小さい声だったけど、俺は聞き逃すことはなかった。

心の中でぎりぎりまで抑えていた何かが簡単に外れてしまった。元々廊下にも人はいなかったが、梅木の手を引き自販機のある食堂に戻った。


「け、賢太くん!?」


自販機の陰には完全に隠れていなかったけど、梅木を壁に押さえつけながら向かい合い、強引に腰を下ろさせる。

さっき買った飲み物をその辺に放り出して、両手で梅木の髪や頬を夢中で撫でる。もう他のことは何も見えなくなった。


梅木も、今度は顔を赤くしながらも、まっすぐ俺を見てくれる。


「……ねえ、早く教室戻らなきゃ」

「一回だけだ。目つぶれ」


梅木の目元がとろんとして、そのままゆっくりと目を閉じた。

……こんな顔されたら独り占めしたくてたまらない。琢にも他のやつにも絶対に見せたくない。


「……賢太くん、慣れてるね」

「あほか」


そうして俺らは食堂を後にして、別々に持ち場に戻った。