「路上ライブかい。お嬢ちゃん、高校生で頑張ってるんだな。この先の曲がり角を曲がれば、大きな公園があるから。そこで歌えばええよ。人もたくさんおる」




電車を降りると、そこは初めてくる町。木々も、空も人も、まるでさっきまでいた町とは別世界のように感じる。ふと顔を上げて目に映った澄んだ夕日が、それはとても綺麗で、吸い込まれそうだったことを覚えている。


私の町の駅よりも少し大きめな駅。どこに向かってどこに出ればいいのか分からず、迷っていると、目元の優しげなしわが印象的なおじいさんが声をかけてくれた。服装を見て、この駅で働いている人だと知ると、少し安心した。

「あの、すみません。この駅の近くで、路上ライブとかやっていいところありますか?」

不安げに問うと、おじいさんは胸元のポケットから地図を取り出した。どうやら、この町の地図らしい。たくさん働いてきたしわしわの手で地図を広げ、丁寧に道案内をしてくれた。

「ありがとうございます!」

未知の世界に放り出されるのは、それはそれは不安なことだった。そんな私を助けてくれたおじいさんには感謝してもしきれない。

いつまでもにこやかに笑うおじいさんに、何度もぺこぺこと頭を下げ、ギターを担いで私は案内された方へと走り出した。