「唄奈、お願いがあるの」

私の名を呼ぶ声に振り返ると、私の部屋から取ってきたのか。見覚えのあるギターを持った母親が、真っ直ぐに私を見ていた。


黒の少し厚手のギターケースと無地のピックは、母のプレゼント。
その中に入っているのであろう、少し傷のついたギターは父のプレゼント。
どちらも中学の入学祝いで私の大事な宝物。


「お願いって、何?」

弱い私は、母の真剣な目を見て話すのがどうも怖く、思い出深いギターをただ見つめながら問う。

「あのね__」






あぁ、あのギターを最初に握った頃は、どんな気持ちだったっけ。