「お疲れ様でした」
俺はそう言うと店を出た。
さて、もう22時過ぎだ。いつもならこのまま電車に乗って早々に帰るのだが……。
俺は足をいつもと逆の海の方へと向けた。
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1段と潮の匂いが強くなる。ザァザァと規則正しく波の音が聞こえる。
真っ黒な絵の具をぶちまけた様な雲ひとつない空には点々と明るく星が輝き、三日月が明るく世界を照らしていた。
俺は海へと繋がる階段を1段1段降りていった。
そして、下から4番目。女の子からは2段目。そこにたどり着くと俺は足を止め、目の前にいる女の子に目をおとした。
女の子の髪は月の光に照らされ、キラキラと光る。人工の毛染めでもここまで綺麗に染まらないだろう。
綺麗な髪だな、と女の子を見る。
「────ねぇ、」
女の子が口を開いた。思っていたよりソプラノでか細い声に俺は少し驚く。
そして女の子はゆっくりと振り返った。
女の子の青い目と目が合う。
俺の心臓は痛いくらい速くなっていくのが分かった。
「あなた、運命って信じる?」
─────これが、俺と海子との出会いだった。

