「ありがとうございました。またお越しくださいませ」
満足げにお金を払って行ったお客さんに俺はそう言って一礼する。
あれが最後のお客さんだからこれで今日の仕事はおしまいだ。
あとは片付けだけかぁー。と身体を伸ばす。
「拓海ちゃん。お疲れ様」
「谷田さん。お疲れ様です」
谷田さんは主婦でここのカフェの厨房で働いているベテランの人だ。息子と娘がいるらしいが2人とも家を出ていて旦那さんと2人暮らしらしい。前に松岡さんが言っていた。
「中は私がやるから拓海ちゃんは外をお願い」
「分かりました」
俺はそう返事するとテラスへ出て片付けを始めた。
机を吹いたり、ゴミを処理したりしているとふと、海に目がいった。
さっきの子はいるのだろうか。
あの月明かりに照らされてキラキラと光る金髪を探すと、それはさっきと同じ場所にいた。
まだ座って海を見ていた。
「あの子、またいるの」
「太田さん」
女性にしては低いアルトボイスの太田さんが俺の背中から顔を出しそう言った。
「またって、どういうことですか?」
「そのまんまの意味。あの子、いつもいるから」
「いつも?」
「そう。いつもって言ってもこの夏の間だけね。ずっといる。んで、飽きもせずに海を見ている」
太田さんはそう言うと俺が持っていたゴミ袋を持って中に入っていった。
俺はもう1度女の子を見た。
「………………」
やっぱり、気になる。

