24歳になった多崎浩介は、今年度初の出社日。
学生の頃と変わらず、小田急電鉄を使って藤沢駅にある実家から片瀬江ノ島駅に向かってる。
婚約者ができたので、一層仕事をがんばらなければいけないが、、、
今日から会社かぁ。。あ〜だるい。。
そんな気持ちだ。

…次は本鵠沼ー本鵠沼ーお出口は左側です...

あと二駅ー。。

…次は鵠沼海岸ー鵠沼海岸ーお出口は右側です...

あと一駅ー。。

と思っていた時、右肩がずっしりと重くなった。
横を見ると、同じ歳ぐらいの女性が
倒れて俺にもたれ掛かっていたのだ。
「大丈夫ですか?」
声をかけたが返事がない。
「大丈夫ですか?意識ありますか?」
返事がない。

…次は片瀬江ノ島ー片瀬江ノ島ーお出口は左側です...

駅に着いた。が、彼女は意識を取り戻さない。
人がどんどん降りていく。。。

これは大変だと思い、彼女を背負い駅に降りた。

誰も助けてもらえない。どうすればいいんだろう。

彼女のおでこに手を当てた。

凄く熱い。。

会社に遅刻してしまう。
でも、彼女は意識が無いほど凄い熱だ。

緊急事態だと思い、浩介は電車を折り返して、彼女を背負って自分の家に向かった。


自分の部屋のベットに寝かし、手当をしようとした時、
「ここどこ?」
彼女の声を初めて聞いた。
「片瀬江ノ島駅に向かう途中の電車で、
倒れていて意識がなく、凄い熱があったので俺の部屋に連れてきました。」
「そうだったのですか...それはそれはありがとうございます...」
「体調どうですか?」
「まだ風邪っぽい感じがします...」
「手当します。少し待っててください。」
急いで、救急箱を取って部屋に戻った。
「会社ありますよね?行かなきゃ...。」
彼女が言った。
「熱がある人を放って置けないですよ。」
「ホントに迷惑かけてすいません。。」
「名前聞いてもいいですか?」
「竹内夏菜です。」
なんか聞いたことある名前だった。
「私も名前聞いてもいいですか?」
「多崎浩介です。」
竹内さんがいきなりハッと驚いた顔をした。
「どっかであったことありますか?」
「ある気がします」
「もしかして、こうちゃん?」
こうちゃん...こうちゃん...こうちゃん...
嘘だろ?!?!
「夏菜?」
「はい!」
「こうちゃんにもう一度会えるなんて」
「夏菜にもう一度会えるなんて」
指輪を見た。
「夏菜、着けてくれたんだ」
「こうちゃんも」
「夏菜、ずっと会いたかった」
「私もだよ」
「好きだよ、ずっと」
「私も。でもこうちゃん、婚約者いるよね?」
「うん。親に無理やりお見合いさせられて、婚約した相手だけどね」
「その人とは結婚するの?」
「結婚したい人にもう一度恋をしちゃったから、その人には結婚、断るよ」
「そっか...」
「夏菜、俺夏菜にもう一度恋をした。俺と結婚してください」
「こうちゃん?」
「なに?」
「私今すっごく幸せだよ。私と結婚してください」
「はい。指輪ないけど...」
「10年前に貰ったよ」
「あれでいいの?」
「あれがいい」
「分かった。夏菜、一生隣にいて」
「一生隣にいるよ」


夏菜と浩介は結婚することになった。
僕は君に何度も恋をする。
夏菜、今でも俺は君に恋をしてるよ。