夏菜と出会って8ヵ月。
夏菜と付き合って4ヵ月が経った。
12月1日
今日は学校をサボって夏菜とデートする。
制服を来て、いつもの時間に家を出て、いつもと同じ電車に乗る。
そして、夏菜に会って電車を折り返して、
学校とは反対方面に行く。
夏菜は遊園地に行きたいと、前に会った11月1日に言っていたのを思い出して、今日は遊園地に行く。

「夏菜。なんで遊園地に行きたかったの?」
「こーちゃんと一緒に観覧車に乗りたいからだよ」
付き合ってから、夏菜は俺のことをこーちゃんと呼ぶことになった。
誰も呼んでない名前で呼びたかったらしく、夏菜があだ名を付けた。
「観覧車か。いーじゃん。」
「いいでしょ!」
遊園地に着いた。
浩介はジェットコースターとか乗りたかったが、夏菜が駄目だったので
ゴーカートに二人で乗ったり、昼間はフードコートでご飯を食べて、写真を撮ったりした。
通学の時間しか会えなかったので、こんなに長く一緒にいれて凄く幸せだった。

「いっぱい乗ったねー。私今凄く幸せだよ」
「俺もだよ」
「まだ観覧車乗ってないね。暗くなったから、今乗ったら夜景が綺麗かな?」
「そうだね。乗ろっか!」
「うん!」
二人乗りの観覧車に乗った。
「すっごい夜景綺麗!」
「綺麗だ!」
そうだ。今日の為に指輪を買ってきてたんだ。
中2だし、結婚とかまだまだだし、指輪も高いものではないけど、
夏菜とお揃いのものを身につけたいと思った。
夜景に夢中だった夏菜に
「夏菜。こっち向いて。」
と言った。
「どうしたの?」
「俺、渡したい物があって」
「え?なになに?!」
鞄の中からケースを取り出した。
「これ。開けてみて」
「うん」
夏菜が指輪のケースを恐る恐る開けた。
「なにこれ?!?!」
「見ての通り指輪だよ」
「え?何で??」
「夏菜とずっと一緒にいたいと思って。結婚とかまだ先だし、中2だからね。
でも、夏菜と付き合ってる証拠が欲しくて、お揃いの物を身につけたいと思ったから。
ちょっと重すぎたかな?」
「全然重くないよ。すっごく嬉しい。こうちゃんありがとう。」
そう言いながら、夏菜は泣いた。
夏菜は最近会う度に泣いてる。

「夏菜。これからは、お互いに秘密はなしにしよう?隠してることがあるとしたら、言って欲しい。」
「うん...」
「俺は隠してる事が無いけど、夏菜は何かある?
「こうちゃん、私が何か隠してること気づいてた?」
「え?」
「私、重要なこと、こうちゃんに言ってなかった。」
「なに?」
聞くのが凄く怖かった。だけど、知らないと彼氏として駄目だと思った。
「私が未来から来たって言ったら、こうちゃん信じる?」
「...」
「私、10年後の未来から来たんだ。」
戸惑って戸惑ってしょうがなくて、何も言えずに夏菜の言ってることを聞くしかなかった。
「私ね、24歳なの。でもタイムスリップして今の私は14歳。
タイムスリップは月の初め、つまり、毎月の1日しか出来ないの。」
「うん」
「24歳の4月1日に私は会社に向かう通学列車で、こうちゃんと出会う。
でもね、24歳になったこうちゃんは婚約者がいてね。
でも、私はそんなこうちゃんのことを好きになる」
「うん」
「こうちゃんの事どうしても諦められなくて、その事を相談した女の人がいきなり、タイムスリップしてみない?って言い出して」
「うん」
「その人に従って私はタイムスリップした。10年前のこうちゃんに会うために」
「うん」
「14歳のこうちゃんは、24歳のこうちゃんと変わらず優しくて、素敵な人だった。でも、1日しか会えなくて辛かった」
「うん」
「付き合って欲しいって言ってくれたり、指輪をプレゼントしてくれたりして私すっごく嬉しかった」
「うん」
「でもね、今日でさよならなんだ。」
「嘘だろ!?なんで?」
「タイムスリップ出来るのは8回。つまり8ヵ月の間しか無理なの。次の月もその次の月も私は、14歳の私は、こうちゃんの前に現れることは不可能ってことだよ」
夏菜は泣きながらいった。
「夏菜」
「ん?」
「嘘だって言って。冗談、いつまでも一緒だって言って」
「ごめんね。こうちゃん」
頬に涙が流れてる事に、今気づいた。
「今日という日が終わるまで、こうちゃん私のそばにいてね」
「...分かった...」
大好きな夏菜のことなのに、自分から聞き出したのに、このことを受け入れるのは辛かった。
「俺と夏菜の思い出はどうなるのか?」
「こうちゃんは私と出会ったことが無かったことになるし、私もこうちゃんと出会ったことは無かったことになる」
「俺がさっきあげた指輪は?」
「指輪は、いつまでも残るよ。2人が着けてる限り。10年後までずっと着けてたら私たちはもう一度会える」
「そっか...」
「夏菜」
「なに?」
「その指輪、ずっと着けといてくれるか?」
「うん!こうちゃんも?」
「ずっと...ずっと着けとく。離さない。」
「分かった。ありがとう、こうちゃん」
「夏菜、君に恋をして良かった」
「こうちゃん、君に恋をして良かった」
12時になった。
その途端、二人乗りの観覧車には浩介だけが残った。