2015年4月1日
中学二年生になった多崎浩介は、春休みを終えて今日から学校がある。
中学受験をして入った男子校は、片瀬学院。小田急電鉄「片瀬江ノ島駅」から徒歩5分の所にある、海が見える自慢の学校だ。
隣には、片瀬女学院という女学院があり、そこに通う生徒は通称「片女」といわれている。
片瀬学院と片瀬女学院は、通学列車も同じで隣同士であったため、付き合う人も少なくなかった。


今日から学校かぁ。。あ〜だるい。。
登校初日であったのもあって、浩介はいつも以上のテンションの低さで電車に揺られていた。

…次は本鵠沼ー本鵠沼ーお出口は左側です...

学校に近づいてくるーー。。

…次は鵠沼海岸ー鵠沼海岸ーお出口は右側です...

あと一駅ー。。

と思っていた時、右肩がずっしりと重くなった。
横を見ると、片瀬女学院に通う生徒が
倒れて俺にもたれ掛かっていたのだ。
「大丈夫ですか?」
声をかけたが返事がない。
「大丈夫ですか?意識ありますか?」
返事がない。

…次は片瀬江ノ島ー片瀬江ノ島ーお出口は左側です...

駅に着いた。が、彼女は意識を取り戻さない。
人がどんどん降りていく。。。

これは大変だと思い、彼女を背負い駅に降りた。

誰も助けてもらえない。どうすればいいんだろう。

彼女のおでこに手を当てた。

凄く熱い。。

学校がもうすぐ始まっちゃう。
でも、彼女は意識が無いほど凄い熱だ。

緊急事態だと思い、浩介は電車を折り返して、彼女を背負って自分の家に向かった。


自分の部屋のベットに寝かし、手当をしようとした時、
「ここどこ?」
彼女の声を初めて聞いた。
「片瀬江ノ島駅に向かう途中の電車で、
倒れていて意識がなく、凄い熱があったので俺の部屋に連れてきました。」
「そうだったのですか...それはそれはありがとうございます...」
「体調どうですか?」
「まだ風邪っぽい感じがします...」
「手当します。少し待っててください。」
急いで、救急箱を取って部屋に戻った。
「片瀬学院の方なんですね。」
彼女が言った。
「なんで分かったのですか?」
「制服を見て。でも、もう学校始まっますよね?行かなきゃ...。」
「熱がある人を放って置けないですよ。」
「ホントに迷惑かけてすいません。。」
「名前聞いてもいいですか?」
「片瀬女学院の中2の竹内夏菜です。」
「俺も中2です!」
「中2なんだー!一緒だね!」
「うん。一緒だ!」
いきなりタメだったので、少し戸惑ったが同じ中2なのでそれは当たり前かと思った。
俺はどんだけ女子と話すのに慣れてないんだw
「夏菜って呼んでいい?それとも、竹内の方が良い?」
「夏菜でいいよ。」
「俺も浩介って呼んで」
「分かった。」

「浩介」
女子から名前で呼ばれたのが初めてだったので、ドキッとして思わず...
「夏菜」
名前で呼んでしまった...なんか恥ずかしいなぁ。

「お母さんは家にいないの?」
いきなり夏菜が言った。
「両親共働きなんだ。私立で、授業料とか高いからね。」
戸惑いを隠せているかな...
「私も一緒だよ。」
「おーそうなんだ。」
「ってか体調どう?」
「良くなったよ。浩介がいなかったら、どうなってたんだろう...ありがとね。」
「全然...それは良かったよ。」
夏菜のこともっと知りたいと思った。
「連絡先交換しない?」
「あ...いいよ...。」
夏菜、ためらってるかな。。
「このアドレスだよ。」
「登録しとくね。あとでメールするね。」
「わかった。」
体調平気なら、学校行ったほうがいいかな。。
「学校行く?」
「体調も良くなったし、行こうかな。」
もう10時をすぎてたが、二人で登校した。
夏菜は俺と同じ藤沢駅から通っていて、2つ下に妹がいて、テニス部に入ってる。
学校までの30分ぐらいの短い時間だったのに、夏菜と話すのが楽しくて、時間がもっと短く感じた。
「今日はありがとね。楽しかった。」
「全然。俺も楽しかった。」
「通学の時に浩介を見かけたら、声かけるね。」
「俺もそうするよ。」
「じゃあまた!」
「うん!体調に気をつけて!」
「うん!ありがと」

女子と話すのが、こんなにも楽しくてこんなにもワクワクするなんて、思ってなかった。
メールいつ届くかな...
そう思いながら、浩介は登校した。