イヌオトコ@猫少女(仮)

みるみる赤くなる頬を撫でながら、

いぶかしげな葦海。


「…というより、どちらさまですか?」


「えっ…」


護浦以外が驚く。


「そういうことになってまして」


頭を掻く護浦。



「僕、こんな可愛いお嬢さんに、なにがひどいこと、したんでしょうか?

だとしたらお詫びしなくては。申し訳ありません…いたた」



痛みを堪えながら頭を下げる葦海。


「よくわかりませんが、お友達想いの彼女が、こんなにお怒りなのは、僕に原因があるようですね」


ぞわぞわぞわっと


鳥肌が立つ。


よく知る葦海の口から出る言葉とは思えなかった。


「…気持ち悪い!…なんで関西弁ではないのだしかも」



逢も悠も、寒気を覚え、腕を抱え擦る。


「せやからいうて、こないな喋り方しよって、…うう、サブイボ出るわ」


護浦もぶるぶるっと震える。


どんな扱いだ。


「…2人とも、記憶が飛んでいる、ということか?お互いに、お互いのことだけ」



あの事故ならおかしくはない状況だ。葦海に背を向け、輪になってひそひそ話し出す。



「ならいっそ、このまま忘れさせてしまった方がいいのだろうか」

「そうですよ!このまま忘れた方が先輩のためですって!」


ひいては自分のためでもあった鳶川。


「そ、それはさすがに、だめだろう」


「しかしだ。嫁がいるとなると、なおさら忘れさせた方が

良くないか?思い出しても傷が残るだけだぞ」


「よめ??」


その言葉には、さすがに護浦もきょとんとした。



肝心なことを忘れかけた。



「よめ、って、嫁さんですか??相に???なんかの間違いじゃあ」



ふっ、と


寂しげな表情で、


「どうそ、よかったら皆さんこちらに来て椅子にお掛けくださいよ。

僕のことをご存知のようですね?僕はなにものなんですか?

どうしてここにいるんでしょう」

普通の人間なら、


記憶をなくし、不安がるのを励まし、いたわるものだけれど、


葦海の場合、標準語で丁寧なのが、ただただ気持ち悪さを増幅させるだけだった。



「ちょっと、ええですか」


部屋の隅へ誘導する護浦。


「ワシ、いや私は、まあ、あいつの幼馴染みみたいなもんで、お嬢、

いや、お嬢さんとは以前、駅でお会いしてまして」



「あっ、引ったくりのときの」


悠が思い出す。



「姫、笑結から聞きました!ありがとうございました」


女子高生に礼を言われ照れる護浦。


「実は、実家が大きな会社してまして」


「あっ、それは主人から聞いてます。以前先生が来られて。主人の会社の、その、ライバル企業?とか…」



「えっ?…あ〜!あいつ、それであんな無茶して」


なにかに納得したようだ。



「…いや、車借りてきてたの知ってたんです。あいつ、ペーパードライバーのくせに。

どないしたんや思って。そっちの事故やなくてよかったっちゃあよかったですけど」



車で事故に巻き組んでいたら目も当てられない。



「まあ、兄貴が継ぐことなってるんで、問題ないんですが、

なんかあったら事態がはっきりせんうちは、あんまり公にできんのです。

今は社会勉強と称して家出してまして。で、私が付き添いに」


「なにか問題が?」


「葦海の名前で何かあると、会社にも影響あるもんで。

まあ、ひと様に迷惑だけはかけるなっちゅう、

会長の言葉だけは守ってるようやけど」


充分、迷惑掛けているが。


「お兄ちゃん?誰か来てるの?」