2人とも地味目のセーターにデニムだ。


「廊下は走らないでください!お静かに!」


「…すみません」


看護師に抑えた声で注意され小さくなる。


「ニュースで見て、事故があったって!心配したのだよ?」


「…あっ、…えっと、あい、と…ゆう?」


「えっ…?」


たどたどしい問いかけに、声を揃え顔を見合わせる2人。


やはり葦海のことだけが抜けていた。


「いいお友達、持ったわね」


事故に遭ったからと飛んできてくれる友達はそういない。


母に言われ、照れ臭そうに2人。。


と、鳶川が、


「あっ、奥さん」



髪を無造作に束ねてヘアクリップで留め、白いセーターにカーゴパンツの遊月が

病室から花瓶を持って出て、背を向けて行く姿が見えた。


「えっ?奥さん??」


女3人、驚く。


「はい。先生の奥さんだそうです。水族館でお会いして、ヨメですっておっしゃいました」


「な……!?」


「結婚してるの!?あの人!!」


母もショックを隠せない。


わざわざ家までプロポーズしに来た男が。


「さ、妻帯者の分際で!笑結姫にまでちょっかいだしたのか!?許せん!!」



病室のドアを乱暴に開ける逢。


足をギプスで固定され、頭に包帯を巻いた痛々しい姿で

ベッドを半分起こし、外をぼんやりと眺める葦海の姿があった。



窓の外を眺めていた護浦が振り向いた。


「ああ!お嬢!もう動いてええんですか!?」


逢の後ろに笑結の姿を見た護浦が慌てて駆け寄る。


「お嬢??」


また全員で驚くが、


笑結自身、護浦すら覚えていなかった。


「……だれ?」


「ああ、ワシは護浦っちゅうもんで、……って、お、お嬢?!」


頭をわしわしと掻く。


「うわあ〜〜!!えらいこっちゃあ!!厄介なことになってしもうた!!」


そんな護浦を気にも留めず、逢がつかつかと葦海に近付く。


自他ともに認める瞬間湯沸し器だった。



ぱん!!



と、派手な平手打ちの音が病室に響いた。


「この男は!!本物のウツケだ!!グーでも足りん!!」



「姫を弄んで!不届きな!!」


「あい!」


「逢さん!」


平手打ちに驚く母娘。怒りを露にする逢と悠。


護浦は、葦海がまた何かしでかしたのかと思った。


そして鉄槌を下した女子高生に、制止するどころか、


反射的にやるな、と外人のような口笛が出てしまった。


思わず笑結が駆け寄り葦海の前に立ちはだかる。


「やめて!この人、私を助けてこんな目に遭ってるんだよ!?」


「『この人』??」


そこで笑結の異変を確信した護浦。



「やっぱりかあ〜〜!!!」



護浦がさらに、うわあ〜!!となる。


葦海は固まったままだ。


どうして叩かれたかもわからず、ぼんやりしている。


「ごめんなさい!!私の友達がこんなことして!!助けていただいたお礼が言いたかったのに!!」


必死で謝る笑結。


目をうるうるさせて、すがり付いて見つめる。


密かに小さな矢が刺さる葦海。


が、


「……なんのことですか…?」