昼休み。

野崎とは仲良くやれていないものの
他の女の子の友達は沢山できた。

「ヒナちゃんブランコしよ!」
「うん!」

「地獄潜りって知ってる?
ブランコの下をくぐり抜けるの。
凄く怖いけど出来たら楽しいんだよ!」

友達が自慢そうに話す。

その子はお手本を見せてくれた。

1人がブランコをこいで、正面から
ブランコを手で掴み持ち上げたと
同時にブランコをくぐる。


当時はそんな危険な遊びが
流行っていた。

今考えるとぞっとするが
これをやってしまう
子供たちは本当に「怖いもの知らず」だと思う。


「やってみる?楽しいから」

友達に誘われるがままに
ブランコの正面に立った。

「せーの!」という掛け声で
一気にブランコの下をくぐる。


やった!出来た!と喜んでいると
「ヒナちゃん!ブランコから離れないと危ない!」


友達がそう叫んだけれど遅く
ヒナはブランコに衝突してしまった。


「だ、大丈夫?!ヒナちゃん!」
「い、いたぃ!」

衝撃は相当だったらしく
地面に叩きつけられたヒナは膝と顎から
血が流れていた。

「立てる?」
女の子たちは心配そうに
ヒナを見る。

そこに
「なにやってんの?」と
野崎がやってきた。

「うわ。お前らなにしてたんだよ」

「地獄くぐり…ヒナ
ブランコとぶつかっちゃった…」

泣きまくる女子。

「うるせーなー。おい、ん。」

「ん?」

「おんぶして連れてってやるから。保健室。ちょっと痛いかもしんないけど、我慢しろ」


彼をいつ好きになったのか
はっきり覚えてないけど
気づけばいつも野崎がいた。

好きになったとしたら
たぶんこの事件がきっかけだったん
だろうなー。

二年、三年、
クラス替えはいつも
野崎と同じクラスだった。

四年生になった日も。
「また、ヒナと一緒かよ。
そろそろ飽きたわ」

「私だって、あんたと同じクラスなんて
もういいわー」

仲がいいからこそ言い合ってる
セリフ。

このまま
平和に小学校生活が終わると思ってた。

「なあ、3年の三学期引っ越してきた
転校生、うちのクラスなんやな」

「そうみたいやね」

「どうせ来るんやったら、綾瀬はるか系がよかったわ。あれ、倖田來未系やろ」



転校生。

高島ユズハ

この子が私達の平和な学校生活を
荒らしていくだなんて
想像もつかなった。