4月8日私は新しい生活を
始めようとしていた。

高校の入学式。
私が入った高校は今年から新しくなり、
先輩がいるには関わらず全く別といった不思議な学校。

例えば、先輩は私服。
単位制。
でも私が入った年では制服、単位制でも決められた授業が、毎日あるといういたって普通の高校のよう。

もうすぐ高校につく。
私の家から約自転車で30分。
近いようで遠いから、毎日通えるか飽き性でやる気のない私には不安だった。

「沙理奈、なにしてるん?前見ときや」

耳の残る声
私のお母さんだ。

ヘッドホンして、考え事をしてた私は
うっかりぼーとしてしまってた。

「うん。お母さん、そこ右やで」

気持ちのこもってない返事をして
左指で右の方を指さす。

ここを曲がれば私の高校。
ヘッドホンを首の方にずらし、初めから先生に目をつけられないように大人しい格好を装った。

「新入生の皆様方!自転車でおこしのお方は奥の駐輪場までお願いします!」

何人もの先生達がスーツ姿で道案内をしていた。

「お母さん、行こ」

私たちは駐輪場に向かった。

まず初めにクラスを見に行った。

体育館前に張り出されてるおっきい板に紙が貼ってありそこに、クラスが書かれていた。

ザワザワと周りの声が頭に響く。

あー…うるさいなぁ

あまり人混みが得意じゃない。
さっさと見て体育館に行こうとした。
クラス順に体育館に並び、入学式を始めるらしい。

背伸びをして自分の名前とクラス、教室を確認して私はさっさと体育館の中に向かおうとした。

「紗理奈。お母さん、説明あるみたいやから先生のとこ行ってくるから、ちゃんとしときや。」

うん。と返事をしてさっさと体育館に向かった。

この高校には誰も知り合いがいない。
本当は幼馴染みの女の子と受かってここに来るつもりだったのに。

昨日の話を思い出した。

「沙理奈。わたし、妊娠しちゃった。
だから、こうこうやめるね」

15で妊娠。
早いという気持ちよりなにしてるの?ってきもちがいっぱいだった。

だって、一生懸命二人で勉強して、受験の前の日も泊まって勉強したのに。

すべてが無意味になった。
悲しかった。
その子がここにいないことが。

……

ホントは違う。
ひとりが嫌だった。

ひとりが苦手なくせに強がって
近寄らさないような雰囲気出してるのは自分なのに。

変わらなきゃ。
その子がいなくて良かったのかもしれない。
ちゃんと、変われるから。
昔の自分を知ってる人がいないから
少しでも素直になれるかもって。

はぁ。。
矛盾ばかりしてる自分の都合のいい脳に私はため息をついた。

私の番号が書かれてる折りたたみイスに私はふてぶてしく座った。
足を組み、腕を組んで偉っそうに。

見た目は黒髪でショートカット。
ぱっつんで、顔は丸顔。
体型はぷっくりしてた。
足は太く、胸もなく、顔も良くなかった。
体すべてがコンプレックス。
だから、マスクをつけて体を隠すように制服に丸まってた。

左手には汚い傷跡。
見られたら嫌われると思うから隠してる。

後悔先に立たず。
この言葉が一番似合うなぁ

すると、今までうるさかった体育館の中だが急に静かになった。

校長が前に立ったのだ。

私は気にせず足と手を組みそのままでいた。

校長は長々と話をしていた。
いつの間にか私は寝てしまってた。
起きた時には私のクラスみんなと担任らしい先生と、教室に移動する時だった。

遅れないように少し早足で先生のあとを追った。


1-6組

これが私のクラス。
四階の隅側。

出席番号11番

窓際の席から二つ横の先頭席。
窓際の方から出席番号一番と、始まる。

なんでよりによって先頭…
だいぶ、嫌だった

窓際の一番前の男子と後ろの女子がギャーギャー騒いでる

うるさいな
静かにできひんのか

そう思いながら私は下を向いた。

先生が話をしだした。

「1-6組担当を持ちました玉田です。」

少し背が高い男の先生だった。

話長そう……

机にもたれかかって私は寝た。

「…奈。沙理奈!!起きなさい!」

体を揺さぶって小さい声で起こしてきた

……誰?

パッと顔を上げ見るとお母さんだった

周りを見るとみんなのお母さん達もいた

「お前!しっかりしいや!!!」

急に怒鳴り声が聞こえた

誰?私にゆった?

そう思って窓際の方を見るとさっき騒いでた男の子のお母さんがその子に注意していた

「はーい笑」

そういって、またうしろのおんなのことはなしてる

なんやこいつ。
わかってないやん。

そう思いながら心の中で笑った。

そのあとの事はあんまり覚えてない。

さっさと終わっちまえ。
そう思って入学式が終わった。

家に帰ったらお祝いの言葉もなくあんたのせいで今日疲れたわ。っていわれた

うからんかったらよかったのにって。

ま、そうやね。
お母さんは妹で精一杯やもんね。
まだ五歳の妹。
幼稚園に通っていて私とは半分しか血が繋がってない。
お父さんが違う。
お母さんは体が弱く生活保護を受けていた。
妹のお父さんとは籍は入れてない。
だけど、何故か住んでいた。
同じ家に。
それが嫌で嫌で。
自分の居場所がなくて。

何度も何度も手首を切った。
心配されたかった。
愛されたかった。
妹だけじゃなく私にもかまって欲しかった。


なんて、今になれば言えるのに。


この後、あのうるさい男子と何かがあるなんて誰も思ってなかったと思う。
むしろ、嫌いだった。
うるさいし、雰囲気的にはちゃらくみえた。
一瞬だけど。

とにかくこれが、私たちの出会い。