「春希のこと、見てたんじゃないの?」
「べ、別にただ視界に入っただけで、見てたわけじゃ…」
「ふーん」
そう言って先輩はこっちに向かって歩いてくる。
私の頭にぽんっと手を乗せて言った。
「じゃあ俺にもチャンスあるかな」
「え…?」
「ん、なんでもない。俺、浦部陸(うらべりく)、よろしくね!」
またねと言って先輩は出て行った。
保健室のドアが静かに閉まる。
先輩の言葉を思い出してふと外を見る。
そこにはやっぱり少し頬を赤らめてどこかを見る春希がいた。
好きな人ほんとにいたんだ。
先輩が言ったチャンスの意味を考える暇がないくらい春希のことを考えている自分。
私、何でこんなにもやもやしてるの?
