中学1年生の冬。

私、桜木 春歌は長年通っていた音楽教室をやめた。

理由は簡単。引っ越してしまい通えなくなるからだ。

とは言っても、少し離れた場所に引っ越すだけで学校は転校しなくていいらしい。

私の1番好きだった場所。

音の葉音楽教室。別れを告げることで、改めて私は音楽が、この場所が好きなんだなと実感した。

「春歌!」

名前を呼ばれて振り向くと同じ2号室の
夏代 爽太と冬柴 柊晴がいた。

「はるぅ〜。さびしいよ〜。」

と、泣きながら言う柊ちゃん。

「もー。柊晴泣かないでよ。さびしいのは春歌の方だろ?」

と、爽太が。

「あはは。男なんだから泣かないの。もう中2なんだから。」

「春は大丈夫なの?」

「大丈夫。...大丈夫。わ、私は」

やばい。なんで。気持ちは決めたはずなのに。

「春歌?」

目の前が滲んで声が震える。

「私は、まだ、爽太と柊ちゃんと、音楽やりたかった。」

涙を堪える。でも声が上擦る。

「だけどね、ごめんね。さよならしなくちゃ。」

そう。2人とは音楽教室が同じなだけで、学校も住んでいる地区も全く違う。

───会えなくなるかもしれない───

そんな事を考えると、涙が止まらなくなる。

「はる泣かないでよぉ゛」

「柊ちゃんこそなくなよー」

と、ふざけあっている時に

「じゃあさ、」

と爽太が真剣な表情で言ってきた。

「何?爽太。」