一方、魔法でお姫様の世界にやって来た魔女は、暑さによってひどく弱っていました。


とはいえ、今は春。どちらかと言えば快適な季節です。


「……暑い」


ずっと冬の世界しか知らなかった魔女。

彼女にとって、太陽の光は目に毒でした。


目だけではありません。

油断すると、太陽の熱に焼かれて肌が溶けてしまうのです。


魔女が冬のなかでしか生きられないのはそのためでした。


もっとも、魔女自身はそれを知らなかったようですが……。



魔女はブツブツと呪文を唱え、自分の肌をごくごく薄い氷で覆いました。

こうしていれば、溶けることはありません。


ほっと一息ついて、魔女は再び考えました。


“お姫様はどこだろう?”


辺りを見渡せば、目に映るのは緑色の木々。

ただ、その緑色さえ、魔女には目新しいものでした。


しばしそれに目を奪われてから、町に向かって歩き出しました。