それはすぐにわかりました。

自分には決して手の届かない幸せを、絵本の中の姫は当たり前のように手にしている。

それがたまらなく嫌でした。


魔女はなんとなく、こう考えました。


“わたしはこの姫が嫌いなのだろうな”


いつも誰かに愛されて陽の光の中にいる姫。

対して魔女は、永遠の冬にひとりきり。


太陽が顔を出すことなどなく、曇り空が晴れるところなど見たこともありません。ただ、それは優しいものであるらしいのです。


魔女が知っているのは、吹き付ける冷たい風。感覚を奪う真っ白な雪。灰色がかった空。



明るいものなど知りません。温かいというものも知りません。


“外に行ってみたい この世界の外に”


魔女は、このお姫様がいる世界に行ってみようと思いました。