私を見つけて

病室に戻ってくると、相変わらず小さな音量で音楽が流れていた。
お母さんが丸椅子に腰掛けて私の足をさすってくれている。

ラブソングばかりを集めたアルバム。
あなたのことが好きで好きでたまらない、と女性シンガーが歌っていた。

誰かと『一緒にいたい』という気持ち。
誰かを『好き』になること。
今まで私は知らなかった

この世に未練なんてなかったのに。
こんなはずじゃなかったのに。
こんな気持ち、知らないままだったらよかったな。

「あ……」

お母さんが立ち上がった。

見ると、肉体の私が涙を流していた。

「さくら……」

お母さんが私の名を呼ぶ。

私は目を覚まさなかったけれど、その目からは次々と涙がこぼれては白い枕に吸い込まれていった。

事故にあって初めて「生きたい」と思った。
その理由が、『好きな人ができたから』だなんて、大人たちは笑うかもしれない。
あきれるかもしれない。

だけど、私たちは大人の人たちが思うよりもずっと真剣に恋をしている。
将来のことを考えるのと同じくらい本気で、刹那的に。