私を見つけて

次の日も私は図書館にきていた。
アキは来ないかもしれないとも思ったけれど、精神だけで移動できてしまうから、気がつけば来てしまっていたのだ。

いなくてもがっかりしない。
いるって期待しない。
自分にそう言い聞かせながら、本棚の角を曲がり、いつもの自習スペースに、アキの背中を見つけたとき、泣きたいくらいほっとした。
そして、その瞬間にはっきりと自覚した。
私の中に芽生えたアキへの気持ちに。

「おっ!」

私にきがつくと、アキはガタッと大きな音を立てて椅子から立ち上がった。

「さくら、昨日、ここ来てた?」

「え? なんで?」

「いや、俺さ、昨日熱がでてこれなかったから、ここに電話してさくらに来れないって伝えてもらおうと思ったんだけどさ、何回電話しても、誰もいないって言われたから」

あ、それで昨日は図書館司書さんが何度も見に来たのか、と心のなかでうなづく。

「偶然だね。私も昨日は急な用事でこられなかったんだよ」

「そうか……。ならよかったよ」

アキは少し安心したように、微笑んだ。

「ああいうときは、困るよな」

パイプ椅子に腰掛けながら、アキがためらいがちに話す。

「ああいうとき?」

「あー、うん。連絡したいとき。さくらに」

「そ、うだね」

もし、私が幽霊でなければ。
携帯番号の交換だってできたのに。

「ま、でもさくらも来れなかったならよかったよ。待ってたら悪いからさ」

アキは明るく言うと、リュックからノートを取り出す。

「追試まであと五日だよ」

髪の毛を左手でつまみながら、アキは私に向かって笑いかけた。
そうだね、と言いながら私も無理矢理笑った。
心の奥がチクリとしたけれど、無理矢理に。