「…よし。」




俺は朝の読書で読んでいた本をパタンと閉じて
席を立った。



ロッカーを開けて
何やら探している様子の彼女の元へ
一直線に歩いていく。






「…相沢さん。」





「えっ、は、はい?……あぁっ!!」






俺を見るなり驚いた様子の彼女。





「まさか同じクラスだったとはね。
今日まで話しかけるタイミングなくて…
話しかけられなかったんだけど。」




俺はあの時と同じように
王子様キャラを演じたまま、彼女に話しかけた。






「ほ、本当だね…あっ、わ、私、
あいざ…「相沢美麗ちゃん、でしょ?」




彼女が言い終わる前に俺が言った。



「えっ、あ、はい…」




「ふふ…ほら、始業式の日。
前に立って自己紹介してたから。知ってるよ。」





「あっ、そっか…そうだよね、へへ…」




恥ずかしそうに笑う彼女に

不覚にもドキッとしてしまった。





ちゃんと見ると、
やっぱり良い女だな…




「俺は、御影悠人。よろしく。」





「うん。御影くん、よろしくね。」






ん…?
御影って聞いてもなんも反応しないとこみると
こいつ、俺と婚約すること知らないのか…?



自分の婚約者が御影財閥の御曹司だって
まだ聞かされてないってことか…?



…よし。カマかけてみるか。





「…ねぇ、相沢さん。」





「ん?」





「今週末、クラスの親睦会やろうかなって
思ってるんだけど…相沢さん空いてる?」





「あ…今週末は…ちょっと…
…大切な家の用事があって。ごめんね。」





「そっか。じゃあ別の日にするよ。
相沢さん、転入生だからぜひ参加してほしいし」





「あっ、本当にごめんね、ありがとう。」





ふーん。

今週末に顔合わせがあることは知ってるんだ…


ってことは婚約することは聞かされてるけど
相手が誰かはまだ知らない…ってことか。





ま、あえて言う必要もないか…



どーせあと2日もすれば分かることだし…