「えっ…婚約?」
「あぁ。
お前もそろそろそういう年齢だろう。
…なんだ悠人、嫌なのか?」
久しぶりに家族で食事だと思ったらこれだ。
だからわざわざ父さんと母さんは
早く仕事を切り上げてまで今日は俺と食事をとる
なんて言ったのか。
「…えっ、いや、その…
あまりにも、急すぎというか…」
父さんは俺が、これまで父さんの命令に
従わなかったことがなかったから
この婚約のことも
俺はすんなり受け入れると思ったんだろう。
ただ、
今までのピアノを習えだの生け花を習えだの
学校の成績は学年5位以内をキープしろだの
そういうのと今回の婚約とでは訳が違うだろ。
「…まぁ今すぐ結納、ってわけじゃないから。
まだそんなに気負わなくてもいいわよ。」
お母さんはそう言うけど
いきなり婚約者がいるって言われた
俺からすれば気負うなという方が無理な話だ。