『パンッ』
「えっ、」
振り返ると生徒手帳が開いた状態で
廊下に落ちていた。
慌ててポケットに手を入れると
私の生徒手帳がなくなっている。
自分の生徒手帳だと気付いたその時にはもう、
すぐ後ろを歩いていた岸野爽くんが
私の生徒手帳を拾おうとしていた。
「あ、それ私の…」
「……」
岸野爽くんは開いた生徒手帳を拾い上げ、
ふと中身を見たあと、
ハッとしたように私を見つめた。
そしてこう言った。
「……美麗…?」
「え…?あ、あの…」
「…お前…美麗なのか…?」
…な、なに…いきなり…
「え、あ、はい…
私の名前は相沢美麗ですけど…。」
私が恐る恐る答えると。
「おい、美麗!…お前、覚えてねぇのか?」
「…は、はぃ…?」
な、なんなのこの人…!!
なんでいきなり呼び捨てで、
しかもちょっと怒ってるの…!?
覚えてるってなにが…!?
こ、怖いんですけどーーっ!!!
「あ、あの…なんのことか
さっぱり分からないんですけど…
とりあえず、授業始まるんで…
それ、返してもらえますか…ね…?」
すると岸野爽くんは
無言で私に生徒手帳を差し出した。
ふぅ…良かった…
「あ、ありがとう…ございます…」
「おい…「あっ!じ、じゃあ!急いでるので…」
岸野爽くんは何か言いかけてたけど
もうチャイムが鳴る寸前なのは嘘じゃないし
何より岸野爽くんの目つきが怖かったので
私は急いで教室に向かった。
