…いつもなら。 こんなとき 知らない人に、 声なんて掛けないけど。 「…なにしてんの、?」 そう声を掛けた。 …きっと、ただの気まぐれ。 土下座みたいな態勢から のっそり頭を上げたその人は 色素の薄い、吸い込まれるような瞳で 俺の手の上の薄いピンク色のあめ玉をじっと見つめた。 それからおもむろに口を開いて 「……ありがとう」 そう言ってあめ玉を受け取ろうとして 立ち上がろうとしたその人は、 「…っ痛。」 とつぶやくように言いながらまた座り込んでしまった。