strange

ホッとして少しスピードを緩めて早歩きで慧の元へと急いだ。


しばらくして信号が青になって、慧がこっちへ向かって自転車をこぎ出した。

迎えに来てくれているんだ…

更にスピードを落として歩き出した時。


慧を一瞬にして大きな陰がのみこんだ。

ドンッ

それはぶつかる音なのか自分の中で鳴った音なのかわからないまま…


慧の元へと急いだ。


人だかりができてくる。

大人達の大きな声が飛び交う。

女の人が口元を押さえて見ている…


「嫌…嫌だ…慧…」

息が苦しい。

慧…お願い、ちょっと擦りむいた肘をさすりながら笑ってて。


自転車を起こしてこっちに向かって歩いてて。

謝る運転手に大丈夫、大丈夫っていつもみたいに平気な顔で笑ってて…

慧…お願い。

お願い…おねが…い…


横断歩道なのたどりついた時、慧は…


「慧?…慧!慧……」

歪んだ自転車と、見たことないぐらいの赤い血の上に慧が倒れていた。


「いやぁ!慧!慧!起きて、大丈夫?こんなに血が…」

慧に駆け寄っても、慧に触れても…

慧は返事をくれなかった。

左折してきたトラックが横断歩道を渡る慧を確認しなかった…
それが事故の原因だった。