ひたすら泣いた後、私達は一緒に家に帰った。

何も話せなかった。

ただ、足を動かすことだけが精一杯だった。


家に着くと、お昼前に帰ってきた子ども達を見て何か悟ったママは私達をリビングのソファに座らせた。

暖かい紅茶を私とあきの分そっとテーブルに置いた。

そっと口をつけて、静かにすするとカップをそっと戻した。

また涙が込み上げてくる。


あきがカバンから、一冊の手帳を出した。

「これ…沙良の。沙良がある日、目覚めたら記憶を失くしてしまってて。病院にも行ったし、本当に色々悩んだんだ」

あきの静かな声。


「でも、沙良にとって思い出さないことがいいのか…って。そう考えてこの手帳を俺が隠した」

その手帳は見覚えのある間違いなく私の手帳だった。