「慧…じゃないね…あき」

涙が止まらない。

あきは目を真っ赤にして泣いている。


「あき…どうして?」

あきは少し怯えたような表情を見せた。


「どうして…私は慧を忘れちゃったんだろうね。どうして私…一番忘れちゃいけない慧を…忘れちゃったのよ…」


泣き崩れた私をあきはただじっと見つめていた。


「慧…慧…ごめんねぇ。私…笑って過ごしてた。ごめんね…ごめんなさい」

こんな私の上にも桜の花びらは優しく舞い落ちてくる。

まだ恋を知らなかったあの時と同じように。