中庭に出て、桜の木にゆっくりと歩み寄る。
舞い散る桜の花びらが、私を包み込んだ。

見上げればそれは学校にいることも忘れそうなぐらい、ただただ綺麗な景色だった。


「桜の雨だ…」

花びらが私の髪に肩に頬に…
舞い落ちてくる。

その花びらをそっと優しくとってくれた人。

花びらにまみれてる私を見て、

「これはこれで綺麗だけど…」

って照れたように笑った人。

私に初めて恋を教えてくれた人。


「沙良…」

聞き慣れた声。

涙で、見えなくても私にはわかるよ。


「慧…どうして泣いてるの?」

ゆっくり振り返る。