「置いてくってね、私、子どもじゃないんだから」

ブツブツ言いながら、制服に着替える。

鏡を見ながらリボンを結ぶ。

襟の内側にネックレスをそっとしまい込んだ。

星の形のピンクゴールドのネックレス。

これが、いつどこで買ったのか思い出せないんだけど。

とにかく、大切にしてるってことは確か。理由はわからないけど、そんな気がして。

肌身離さずつけている。

メイクはあまりしない派だから、日焼け止めとリップを塗ったら一階へ降りた。


朝ごはんも、慧に急かされながら食べてちょっと消化に悪そうだけど。

5分前から玄関で待機する慧のもとへ急いで、

「行ってきまぁす」

つま先で地面を蹴りながら靴を履く。


「手使えよな」

また、呆れ顔の慧。


「何よ?この方が早く履けるの!慧は弟のくせにいつも口うるさいんだから…」

「沙良…?」

玄関で私達を見送りに出てきたママが少し困った顔になる。


「いいんだよ、母さん」

慧が、小さく顔を横に振った。


「え?何、どうしたの?また喧嘩だと思ったの?ママったら」

笑ってママの顔を見ると、ママはいつも通り笑ってた。

うちはパパが今、海外に転勤中で半年前から家にいない。


それでも、ママはいつも気丈で…

「パパも海外で頑張っているから」

と、寂しそうな素振りを見せない。


本当は、寂しいんだと思う。
会えないって…