「初日から寝坊とかする奴、本当にいたんだな」

パジャマ姿の私を制服に着替えてる慧が、ボサボサの髪の毛でベッドの上で座る私を小馬鹿にして笑う。


かまうことなく、私はまだぼんやりしている。


慧の高校の制服姿、新鮮だな。

赤いネクタイか…

ネクタイに視線を移すと、

チクリ…

妙な胸の痛みに一瞬動きが止まる。

赤いネクタイ…
『沙良…』
私を呼ぶ声。

慧の声より落ち着いた、穏やかな声。

誰の声?

「沙良?」

慧の声に顔を上げると、心配そうな慧の視線にぶつかった。


慧の顔を見てフッと笑った。

「慧は赤いネクタイだね。私は今日から青いリボン。羨ましいでしょぉ」

そう言った私に慧の表情が和らぐ。


慧はいつも憎まれ口叩くわりに、心配症で優しいのだ。

「早く着替えろよ、置いてくぞ」

そっけない感じで、部屋を出て行った。