私は自転車に乗れない。

子どもの頃、私よりも早くに補助輪を外した慧のこと、一時嫌いになったぐらい。

自転車に乗ってる感覚はわかるのに、苦手なのだ。


「ねぇ慧…本屋さん行こう?」

「めんどくさーい」


寝転がって漫画読んでる慧の足を足で突っつく。


「…ねぇってばぁ」

足にどんどん力を加える。


慧はまるで無視。


「慧!早く行こぉよ。ねぇねぇねぇってば!」


高速で慧の足を蹴ると、


「あぁ…うぜぇ」

漫画を置いて頭をかきながら立ち上がる。

私のお気に入りの本屋さんは、徒歩だと少し遠い。

自転車に乗れない私は慧に乗っけてもらうことにしている。