「もう少し待ってね…」

「もうちょっとで届くから」


白いモヤの向こうに、手を伸ばした。

モヤが邪魔で先が見えない。

届きそうなのに…

できる限り手を伸ばした。


「どこに届くつもりだよ?」


光が眩しくて目が開かない。

眉間にしわを寄せて、なかなか目が開かない私を覗き込む人。


「おーい。沙良?」


シルエットだった姿が明確になるまで数秒かかった。

ハッキリと私の目の前にある顔が認識された。


「慧(けい)?」


目をこすりながら慧を見ると、少し驚いてその後、少し困った顔をする。

その後、小さくため息をついて、穏やかな声で…

「沙良、とりあえず時計見ようか」


差し出された目覚まし時計に目をやると、私の目は確実にハッキリと覚めた。


「8時?ちょっと、遅刻しちゃうじゃん」


ガバッと布団を押し上げて起き上がる。