席に着いて、教科書を整理していると、なにか入っていた。

 なにこれ。手紙……?

「尾形圭」

 同じクラスの男子の名前。

 まさか、ラブレターじゃないよね?

 こっそり授業中に開けてみよう。

「ホームルーム始めるぞー。お。久賀は来てるな。偉い偉い」

 誉田先生が私に笑顔を向けるから。

はなちゃんとはぎもっちゃん以外の、女子の痛い視線。

 案の定、ホームルームが終わってからのトイレ休憩のとき、大谷さんたちのヒソヒソ話が始まった。

 こっちを見ながら中山さんに耳打ちしていた。

 はなちゃんとはぎもっちゃんが急いで来て

「久賀ちゃん、心配することないよ」

「そうそう。ただジェラってるんだよ」

 二人が励ましてくれて、敵だけじゃないんだと知った。

 ホームルームが終わって、授業が始まった。

 私はラブレターっぽいものを取り出して、中を開けた。

「久賀さんのことが好きです。付き合ってください」

 男らしい字で確かにストレートにそう書いてあった。

 よりよって今? なぜ今日?

 先生のことが、気になって仕方ないときに、他の男の人のことなんて考えてられないよ。

 断るか……。

 てか、尾形くんは釣り合わないっしょ。

 尾形くんは男子だけど「かわいい」系男子だし。

 私は普通の容姿だし。中の下? 下の下ではないと信じたい。

 まあ、私と先生も釣り合わないけど。

 先生と釣り合うのは……ってまたあの女の人を思い出してしまう。

 私はルーズリーフを取り出して返事を書いた。丁寧に。

 素直にぶつけてくれた思いに失礼のないように。

「私には好きな人がいます。申し訳ありませんが、お付き合いできません。悪しからず」

 私はこの紙をどう渡そうか迷った。

 今出席番号順に座っているから、尾形くんは一番右端の列の二番目に座っているんだよね。

 私は放課後にこそっと入れることにした。