昼休み。

 職員室に行ったら、誉田先生が入り口近くに座っていた。

 弁当を食べていた。それも、手作り。

「先生」

 私が声をかけると先生が振り向いた。

「ん? どうした久賀」

「じつは、見ちゃったんです」

「何をだ?」

 先生はパクパク弁当を平らげている。

 ほっぺに食べ物を詰め込んでいるところが、リスみたいで可愛い。

「この前の夜、先生が彼女といるところ、目撃したんです」

「彼女? 先生はそんな人いないぞ」

 即答した、嘘ではなさそうだった。

「だって、たくやって呼んでたし」

「ああ、あれね。あの人は、俺のねーちゃん」

「は?」

 目が点。

「この弁当作ったのも、ねーちゃん、すごいブラコンで困ってるの」

「よかったー」

 安堵が思わず口から出ていた。

「よかったって、おまえ、俺に気があるのか?」

 図星をつかれて、何も言えなかった。

「そうかそうか。ちょうど俺もおまえに興味を持ち始めたところだ」

 耳を疑った。

「え?」

「尾形から休みの連絡受けたときに相談されてな。『久賀さんのこと好きなんですけどフられ
ちゃって……』てな」

「先生にそんなこと言ったんですか?」

 私は驚いて目を見開いた。

「そしたら妙におまえのことが気になりだしてな。最初は野次馬根性のはずだったんだが、お
まえを見ているうちに妙にかわいくみえてな。なんでだろうな。おまえ、顔真っ赤だぞ」

「先生にそんなこと言われて平然としてられる人はいませんてば!」

「ははは。そうか。んじゃ両思いなんだな」

 先生の言葉についていけない。

「これから、よろしくな」

 先生は笑って、手を差し出した。

 私は手を握り返して、微笑んだ。

「こちらこそ、よろしくお願い致します」