命の軌跡

 私が目を覚ましたのは、ずっと後のことだった。

 私は目を覚まし、「ふぁ〜」と大きな欠伸をしながら、起き上がった。

 自分では一時間程度寝たつもりでいたんだ。

 でも、それは違った。

 それに気付いたのは、時計を見たからではない。

 私は重い体を右手でぐっと押し上げて立ち上がり、リビングへと足を踏み入れた。

 その瞬間、私は目を疑った。

 いるはずもない人影が私の目に映ったから――。

 私の目に映ったのは、恭平の姿だった。

 彼は私に気付き、椅子に腰を下ろして状態でこちらを見て微笑んだ。

「帰ってくるの早かったんだね。今日は恭平の大好物の……」

「知ってる! 今日はオレの大好物の煮込みハンバーグだろ!?」

 私の言葉の途中で恭平が口を挟んだ。

 満面の笑みを浮かべながら話す恭平の姿を見て、私はとても嬉しかった。

 恭平は私が起きるまで我慢して待っててくれていたんだ。

 それも、私の喜びをより一層高めた。

「……にしても、卯月のボケには参ったな」

 私には一瞬、彼の言葉の意味が分からなかった。