命の軌跡

 一通りだが、陣痛のことを頭に叩き込んだ。

 出産予定日まで後一ヶ月なので、陣痛はかなり近くまで迫っているような気がしていたから――。

 これで、いつ陣痛に襲われても落ち着いて対応出来る。

 でも、流石に本を読んだだけでは、落ち着いて対応するのは無理かも知れないけど……。

 それより私の頭から離れない"サイレントベビー"という言葉が変に気になって仕方なかった。

 それでも私は"サイレントベビー"という言葉の意味を知ろうとしなかった。

 ううん、知るのが怖かったんだ。

 でも、この言葉が後々に私に大きな影響を与えるなんて、この時の私は想像もしていなかった……。

 出産についての本を一冊買って、スーパーで晩御飯の買い物を済ませた。

 荷物を両手に抱え、そして大きく膨らんだこのお腹で歩くのは、かなり辛い。

 足が動かないどころではなく、手を前に出すのでさえ苦痛だった。

 息はすぐに乱れ、何度も両手に抱えた荷物を地面に下ろした。

 悲鳴が出そうなほど、体を使って、ようやく家へとたどり着く。

 部屋は当然真っ暗なままであった。