命の軌跡

 私は迷わず、真っ先にメモ用紙を手に取った。

 横に盛られてあるおかゆには目も向けずに――。

『卯月へ、何も言わずに出て行ってゴメンな。あまりにも気持ち良さそうに寝てたから、起こしちゃ悪いと思って。

とりあえず、おかゆ作ったから、美味しいか分からないけど食べて。

それじゃ、仕事に出かけるな。何かあったら、いつでも連絡して。すぐに飛んでくるから』

 少しマル字の恭平らしい文章が書かれていた。

 恭平の優しさを感じながら、ようやくおかゆに目を向けた。

 それは、初めて恭平が作ってくれた料理だった。

 私は椅子に腰掛け、冷めたおかゆを温めずにそのまま口にする。

 だって、おかゆ自体は冷めてても、恭平がこの料理に注いでくれた愛情は温かいままだから……。

 味は少し薄い感じがしたけど、それでも十分美味しかった。

 何よりも、私だけのために料理を作ってくれたことが嬉しかった。

 今日の晩御飯は恭平の好きな煮込みハンバーグにしよう!

 と、一人心の中で呟いた。

 恭平のために、私も頑張らなきゃ! って、思えたんだ。