藤の紫と初の幸せ


私は自分より頭一個分上にある幸ちゃんの顔を見上げて、ねえ、と呼びかける。にやっと笑った幸ちゃんは得意げで自慢げで、いつも通りの幸ちゃんで。




「俺と結婚しろ、初」




ぽろっと私の瞳から、また涙が零れ落ちた。




「っ、こうちゃんのばかぁぁぁ……っ」

「へーへー。で、返事は? まあ一つしか認めねーけど」


分かってるくせに、幸ちゃんは意地悪で。でも、私が好きになったのは意地悪で自分勝手で俺様な幸ちゃんで。




「っ、はいっ……!」




幸ちゃんの顔が近づいてきて、私はそっと目を閉じて。


そっと触れ合った二つの唇を知っているのは、吸いこまれるような青い空と太陽と、それから私と幸ちゃんの上に垂れ下がる、ひと房の藤の花。