その日、私は屋上に行けなかった。

何となく忙しくて、何となく気まずくて。

と、同じくして、生徒会室に通うことになった。

文化祭までの日程を確認したり…文化祭でする、劇の練習…男装コンテストの準備など…忙しくて、赤城に会う暇なんてなかった。

けど…なんか少し寂しくて…。

たまには会いたくなるー

連絡しようと思っても勇気がわかなくて出来ない。

もしかして…私、赤城のこと好きなのかもしれない。

ある日、私は見てしまった。

女の子と話してる赤城を。

何故だか心が痛む。赤城だって忙しいはずだから仕方ないって思うようにしてるのに…

自分は赤城の特別なんだって思ってた。

けど…最近、すれ違ってばかり。

どうしよう…このまま何も言えないまま終わったら…。


そんなモヤモヤした気持ちのまま何週間も過ぎた。

迎える文化祭当日。

ゆっくりしてる暇なんてなかった。

男装コンテストの為のメイクと着替えを何とか済ませた私は体育館に向かう。

「頑張れー」と美保と保に送り出され、
舞台に立った。

皆かなり意気込んでるのか、バッチリ決めてきてる。

けど…私はうまく決まらず、粗いままだ。

なのに…大歓声で少しホッとした。

私は舞台から必死に赤城を探してみたが見つからなかった。

そんなとき、会長と目が合い、ウインクしてくれたのを見ると、少し安心できた。

まずまずな出来だが問題は無いのだと…。

そして、コンテストは始まった。

全員のアピールが終わり、投票に移った。

私は保と美保と一緒に結果を待った。

集計が終わり、舞台の方を見た。そこにはマイクを持った会長がいて…

「今から、男装コンテストの結果を発表する」と言った。

私は生唾をゴクリと飲んだ。

「優勝は…道尊地慶…」と会長。

えぇっっ?私が優勝しちゃったの!?

「道尊地、一言頼む」と会長に言われ、私は舞台に上がって、

「純粋に嬉しいです!!ありがとうございました」と頭を下げた。

「次は…女装コンテストするぞー」と会長は言って舞台を降りた。

私は舞台から降りて舞台を見つめる。

ホントにクオリティの高い大会で…全員、めっちゃ可愛い。

ひときわ目立つ真ん中の子…ってあれ!?

あの人…赤城隆也?

嘘…知らなかった、赤城が女装コンテスト出るなんて。

「ねぇ、慶…あの真ん中の子、赤城隆也だよね!」と興奮ぎみに言ってくる美保。

その横で「マジ、めっちゃキレイ…」と保が呟いている。

美保は保を小突きながら、「皆キレイだけど…」とちょっと怒ったように、拗ねたように言った。

「ゴメン」と素直に謝る保も微笑ましい。

全員のアピールが終わり、投票に移った。

集計されてる間、舞台から降りてきた赤城に私は近づいた。

「ゴメンね!忙しくて…道尊地さんの結果見れなかった」と言いながらシュンとしている赤城がなんか可愛い。

「大丈夫ですよ!優勝しましたから。赤城さんも優勝かな?ひときわ目立って可愛かったです」と私が言えば、顔を赤らめて、ありがとと笑った。

集計が終わり、会長は舞台に上がって、マイクを持った。そして、「優勝は…赤城隆也…」と言った。

私たちは抱き合うようにして喜んだ。

「隆也、一言頼む」と会長に言われ、赤城は舞台に上がっていった。

「えーっと、ありがとうございます。俺に投票してくれた人、そして、俺に女装させてくれた、皆。メイクとか協力してくれた皆に感謝します。ありがとうございました」と赤城は丁寧に頭を下げた。

そして赤城は降りてきた。

学校の不良ツートップがそれぞれ、男装、女装で優勝してしまうなんて…。

そして私たちが更に有名になったのは言うまでもない。

ってあぁー呑気にしてる場合じゃない。

次劇じゃん!私は急いで更衣室に向かった。

用意されてあった衣装に袖を通す。

可愛くて…ピッたしのサイズ…。赤城の腕に改めて感動する。

生徒会のメンバーも次々に準備をし、舞台に上がっていった。私は…会長に手を引かれ、舞台に上がった。

大歓声の中、保と美保が目に入る。

赤城は…。いたー端の方に立って見守ってくれていた。

劇が始まった。少し緊張して声が震える。

けど…そんなことを感じさせないパワフルな生徒会の堂々とした演技に負けてられないと私も力が入った。

私の相手役の会長は私の気持ちを察してか、上手くリードしてくれる。

終盤になるにつれ、体育館の熱気も上がる。

いよいよクライマックス…。

会長は私の唇にキスをしたー

って…えぇっ!?嘘…。ホントにしちゃった!?

固まる私。盛大な拍手と共に幕はしまった。

「お疲れさまー」と皆が舞台を降りるなか、私は動けずにいた。