そこへ誰かが来た。

えっ、赤城!?

「お取り込み中だった!?」と赤城は言って去っていった。

かと思えば、今度は美保が来た。

「何してんの?二人とも!!」と私たちを睨み付けてくる。

保は離れてくれない。

「保?美保来てるよ?ほら、何があったのかわからないけど…」と私が言うと、

「今はそばにいて?慶…」って甘えるように囁かれた。

私の鼓動は速くなった。

「バカップルが!!巻き込んでんじゃねぇ~」と私は言って力づくで保を剥いだ。

けど…保の目は真っ赤で、なんとなく保を抱き締め直した。

「言い訳するなら今だよ?美保…。保が私にこんなことするなんてあなたが原因でしょ?」と私が言うと観念したように美保は話始めた。

「昼休み、後輩に呼び出されてコクられた。その子、彼氏いるからって断ったら泣き出して…慰めてた。ゴメンね。保…。妬いたんでしょ?けど…私は今の状態に嫉妬してる。だから、慶からさっさと離れて!!」と美保は言った。

そして保は美保の腕の中におさまった。

そして、二人は仲直りし、帰っていくのを見届けた。そしたら一気にどっと疲れてしまい、私は、その場にへたりこんだ。

そこに…赤城が来た。

「ゴメンね。ドア越しに聞いてた…」と赤城は言って私の横に座った。

「修羅場ってるのかと」と意地悪っぽく言う赤城に「私は保のこと好きなんです!!けど…美保の彼氏だから…」と私は言った。

そうと一言言っただけで赤城は何も言わなかった。

「赤城さんは好きな人いますか?」と私が聞けば、

「…キミ…なんて言ったらどーする?」って。

冗談キツいですよ!

このときはそう思ってた。だってまさかでしょ?

「先輩だったの。中学の時から憧れてて…追ってここ入ったのに…他のやつの女になってた。俺、ぐれたよ。
落ち込んだし…けど、彼女、病気で亡くなったんだ。泣いたよ…彼氏から聞いた話によると、最後まで俺のこと想ってたって」と赤城は話した。

だからか、どこか切なげだった背中は…。

苦しかったんだ…。

「だから誰とも付き合わないですか?」と私の口からはそんな言葉が出ていた。

「まぁね。女グセ激しいって噂あるのは知ってるよね?」と赤城は言う。

「はい、相手構わず、女を口説いてるって…」と私は笑えば力なく笑い返された。

「だから、ほぼ初対面の私にも優しかったのかなって…」と私が言うと、

「それは違うよ。キミのことはずっと見てた。言ったでしょ?有名人だって…」と赤城は笑った。

「そうだったんですか?」と私が言えば、

「だって入学式からあの暴れっぷりは目立つよ?それに、ここでよく叫んだり…寝てたりしてたしね~」と赤城は言った。

うっ、見られてたのか…恥ずかしい。

「さあ、遅くなっちゃったし帰ろうか。険しい顔してた理由は歩きながら聞くよ?」と赤城は言って立ち上がり、私に手を差し出した。

私はその手をとってゆっくり立ち上がったつもりだったんだけど…バランスが崩れて、赤城の腕の中にダイブした。

「あら?随分積極的だね~道尊地さん、大丈夫?」と赤城は笑う。

私は恥ずかしくて顔をあげられない。

「ほら、早く離れて!!帰れない!!」と赤城に言われて、私は慌てて離れた。

そしてふと赤城の顔を見つめる。

キラキラした笑顔で私を見つめた。

自分が赤くなったのがわかった。

体は熱い。「すいません…」と私は言うと、「大丈夫。気にしないで」と頭を撫でられた。

大きくて暖かい手…。なんだかかなり安心した。

私たちは並んで歩きながら、会長に言われた話をした。

「なるほどね。いいんじゃない?文化祭なんだし…。あのね、道尊地さん、衣装作るの俺なんだよ!だから希望あったら言って。道尊地さんに似合う最高の衣装用意するから」と言ってくれた。

なんか私、納得してしまった。

そして無事いえについた。

「またね~バイバイ」と言うと赤城は去っていった。