「えなちゃーん。かーわーいーいー♡」

「……はいはい」

私は先程、「着ないであろう」とクローゼットにしまった部屋着を着て、雪ちゃんに膝枕をしている。

「……なんなんですか、この状況……」

「えー?だって、ひざまくらしてほしかったんだもーん」

うへへ、と言いながら、ゴロゴロと寝返りを打っている。

あれから雪ちゃんの飲むペースは変わらず、案の定早く酔いが回ってしまった。

そしたら何を思ったのか突然、

「えな!めいれいよ!さっきかってあげたへやぎをきてきなさい!」

と真顔で言い出した。

「は?なんでですか」

「いーから!きてきなさいよっ!」

「嫌ですよ、着ません」

あんなの私が着たって似合わないんだから絶対に嫌だ、と、私はふいっとそっぽを向いた。

「ひどい……」

グスン、と鼻をすする音がして振り向くと、だばだばと涙を流している雪ちゃんがいた。

「えぇ……」

いや、引くわぁ……。

「せっかく…えなににあうとおもってかってあげたのに……ひどいっ!」

グスグス言いながら、よよよ、と項垂れる。時代劇じゃないんだから……。

「……もう、分かりました!着替えて来るんで少し待ってて下さい!」

私はこれ以上グチグチ言われるのが面倒になって、そう言って立ち上がった。

「うん!まってるわ♡」

さっきまであんなに泣いていたのに、今度はケロッとした態度。

(……(はか)ったな)

そう思ったけど、また泣かれたら面倒なので何も言わずに着替えに部屋へ戻った。