「あと何かあったっけ……あ、あのチーズで良いか」

キューブ型の、一口サイズのチーズを買っていた事を思い出した。

「さて…と……作っちゃいますか」

私は、チャチャッとアボカドのディップを作り、器に盛り付ける。お皿の中心にそれを置き、その周りをグルッと囲うようにチップスを並べた。チーズは、少し深目のお皿にザラッと出した。

「お待たせしました」

トレイに乗せて、雪ちゃんの所へ運ぶ。

「待ってました♡」

観ていたテレビを消し、テーブルに向き直る。

「美味しそうね」

並べた物をキラキラした目で見て、雪ちゃんが呟やく。

「さ、どうぞ食べて下さい」

「はーい、いただきます♡」

私はワインの入ったグラスを、雪ちゃんに渡した。

「うん!美味しい!アボカドのこのとろける感じ、最高ね!」

さっきあんなに夕飯を食べたとは思えない勢いで、パクパクと口へ運ぶ。

「良かったです」

私も…と手を伸ばした所で雪ちゃんが、

「そーだ!こないだ知り合いから高いワイン頂いたんだわ!それも開けちゃいましょう!」

と、ポンッと手を叩き、キッチンの方へ小走りで走って行った。
高いワイン……。ちょっと楽しみ。

「二丁目で仲良くなったおじさまに、『最近ワインに凝ってる』って言ったらくれたのよ~」

そう言ってテーブルに置かれたワインは、高級感が漂っていた。真っ黒の箱に、金色で「なんとか~」って書いてある。……読めない。

「確かに高そうですね……」

箱の形状から見て、3~4万はしそうだった。

「確か、7万くらいだった様な……」

「な、ななまん!?」

ワーオ……予想を越えた値段に、目眩がする。

「高いワインってたまに飲みにくいのがあったりするんだけど、これは美味しかったの」

雪ちゃんが、手際よくコルクを開ける。