【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有

「でもね……」

突然、ハナちゃんの表情が曇り始める。

「その独占欲のせいでみーんな雪ちゃんから離れて行っちゃうの」

「それって、恋人…って事ですか?」

「そ。付き合っても、雪ちゃんの独占欲に耐えられなくなって離れて行っちゃう」

ハナちゃんが掌を上に両手を上げ、肩をすくめる。

「そうなんですか……」

喜んでいる場合ではなく、深刻な様だった。

「不安になる気持ちも分からなくはないんだけどね……ま、困った事があったら、アタシにも頼って頂戴な♡」

一瞬、ハナちゃんも雪ちゃんと同じ様に儚げに微笑んだ気がした。

でも、それも一瞬で、いつもの笑顔に戻る。

「はい。ありがとうございます」

私は笑顔で返した。

「……さて!」

と、ハナちゃんが膝をポンッと叩いて立ち上がった。

「早く行かないと、雪ちゃんやきもきしてるわよ」

ハナちゃんが、入り口のドアを指差す。

「あ……」

そうだった!雪ちゃんは、先に出て行ってしまっていたんだ。

私は慌ててバッグを手に取り、「ご馳走さまでした」と頭を下げ、お店を出る。先に帰ったりしていないだろうか。……流石にそれはないか。

「あ、ちょっと待って!」

ドアが閉まる直前にハナちゃんに声を掛けられ、顔だけをお店の中に戻した。

「これ、アタシの携帯番号。何かあったらすぐに連絡して。勿論、何もなくても大歓迎だから」

名刺を手渡される。そこには大きく『*Hana*』と書かれ、その下にお店の番号と携帯番号が書いてあった。

「ありがとうございます。あ、じゃあ……」

私はカバンの中から手帳を取り出し、メモ帳の所に自分の携帯番号を記してハナちゃんに渡した。

「これ、私の番号です。勿論、何もなくてもいつでも大歓迎です!」

「ありがとう」

それを笑顔で受け取ってくれる。

「それじゃあ……」

「気を付けてね」

「はい」

ヒラヒラと手を振ってくれるハナちゃんに再度お辞儀をして、今度こそお店を後にした。