【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有

不意の事に、私がビクッ!と体を震わせる。

会話が途切れ、私とハナちゃんが雪ちゃんを見る。ハナちゃんは、小さく溜め息を漏らしている様だ。

「ど、どうしました?」

「帰るわよ」

私が尋ねると、雪ちゃんが荷物を持って立ち上がった。

「え?だって、ゴハン……」

「いいから!」

グッと二の腕を掴まれ、無理矢理引っ張られた。

「わっ……!」

「ちょっと雪ちゃん。そんなに思いっきり掴んじゃ痣になっちゃうでしょ?」

そう言ったハナちゃんを、雪ちゃんは一瞬睨み付ける。いつもと違う怖い表情に、私はギクッとした。

掴まれた腕から力が抜け、パッと放される。

「……江奈、行くわよ」

そう言って、雪ちゃんは振り向かず、お店から出て行ってしまった。

「あ、あの……」

何が何だか分からなくて、私は一人オロオロする。

「……ったく、お気に入りを見付けるとすぐこれなんだから!」

と言いながら、雪ちゃんが座っていた席にハナちゃんがドカッ!と腰を下ろした。

「お、お気に……?」

「江奈っちの事よ。アイツの癖。気に入った子が他の子と仲良くしてるのが気に食わないのよ。全く、子供ね!」

雪ちゃんに出したスコーンをかじりながら、ハナちゃんがプリプリ怒っている。

「江奈っちも大変ね。あんな独占欲の塊みたいな奴に好かれて」

「独占欲……?」

「そ!アタシと江奈っちが仲良さそうにしてるのを見て、イライラしてんの。どーにかならないのかしら、あれ」

はぁ、と大きな溜め息。

そんなに独占欲が強かったなんて、全然分からなかった。ハナちゃんが、「勿体無い……」と言いながら、雪ちゃんの残したコーヒーを飲む。

「アレ、無意識だから困るのよ」

「無意識、なんですか?」

「そうよ~。だから余計に質が悪い!」

顔の前で、人差し指をビシッ!と立てる。

「でも、女性にあんなに過剰に反応するのは初めて見たわ」

顎に手を置き、ふ~ん、と何度も頷いている。

「余程気に入られたのね、江奈っちは」

「え……」

そ、そうなの?ハナちゃんの言っている事が本当なら、少し嬉しい。……あ、いや、あくまでも、「友達として」だから!勘違いしない様にしないと。