【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有

「……はぁ。ハナの抱き付き癖にも困ったものね」

腕と足を組みながら雪ちゃんがボソッと呟く。

「嫌な気はしませんけどね」

フフフ、と笑いながら言ったら、雪ちゃんが睨み付ける様な目線を私に向けた。

「な…なんです?」

「……随分ハナには心を許してるのね」

「え、そんな事ないですよっ」

首をブンブンと振った。

「そうかしら。初対面の時だって、抱き付かれて満更でもない様な顔をしていたけど」

「してませんよ!あの時はビックリして固まっちゃっただけで……」

「ふ~ん」

私の言葉に納得が行かないのか、フイッと顔を背けてしまった。

(な、なんなのよ……)

なんでそんな不機嫌になる??

「なぁに?雪ちゃん、アタシにヤキモチ?」

ハナちゃんの声が聞こえ、振り向くとコーヒーを持ったハナちゃんが、呆れ顔で立っていた。

「コーヒーお待たせ」

目の前に置かれたコーヒーからは、いつもながら良い香りが漂っている。

「……そんなんじゃないわよ」

「どーだか。はい、これも良かったら食べて」

コーヒーと一緒に出されたのは、苺ジャムやクロテッドクリームがたっぷり添えられた、スコーン。

「わっ!美味しそう!私、スコーン大好きなんです!」

「そ?良かった♡」

「いただきます!」

二つに割り、まずはそのまま。サクサクしっとりふわ~ん。焼き目の香ばしさと、バターの香りが鼻から抜け、うっとり。ジャムとクリームも塗り、パクリともう一口。

「ん~!正に三位一体!バターの香りとジャムの甘み。それにクリームのほのかな酸味が心地良いですね!」

「ありがと~♡」

「私もよく作るんですけど、格段に味が違いますね。なんでだろう……」

「うふふ♡今度作り方教えてあげる」

「本当ですか!?うわ~、嬉しいなぁ」

雪ちゃんそっちのけで二人でキャッキャしていると、ガチャン!と雪ちゃんが勢いよくコーヒーカップをソーサーに置いた。